離婚弁護士があなたの離婚問題を徹底サポート 平日夜8時までご相談受付中。
平成26年(2014年)厚生労働省人口動態統計によると、平成26年の離婚件数は、約22万1000件に上っており、他方で平成26年の結婚件数は、約64万9000件ですので、3組に1組のカップルが離婚していることになります。
日本には離婚のパターンとして、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚(和解離婚・認諾離婚・判決離婚)」の4つの類型があります。日本における離婚の約90%が、この中の「協議離婚」です。
協議離婚は、夫婦の話合いで、離婚をすることと、未成年の子どもがいればその子の親権者を定め、役所に離婚届を届け出れば離婚成立というもので、非常に簡単な手続きで離婚ができます。
しかし、このように離婚自体は簡単にできますが、意外な落とし穴もあります。離婚に伴って問題となる慰謝料・財産分与・養育費等といった、将来とても大切になるお金の問題について、夫婦間で十分な話し合いがなされないまま離婚をしてしまい、後々大きなトラブルに発展するケースがあります。
当事務所にも、そういったトラブルの相談が非常に多く寄せられています。
です。
協議、調停、訴訟のいずれの場面においても、離婚に伴って発生する金銭の支払いを巡って熾烈な争いを繰り広げることは往々にして起こります。少なくとも弁護士が関与する離婚事件において、離婚にまつわるお金のことが問題にならない事件は無いといっても過言ではありません。
そこで、これから離婚にまつわるお金の問題について考えてみたいと思います。
離婚にともなって問題となるお金には、よく耳にする「慰謝料」のほか、「財産分与」、「養育費」、「婚姻費用」などがあります。最近では、これらの言葉は世間一般に聞かれるようになってきましたが、それぞれのお金の趣旨や性質について正確に理解している方はまだまだ少ないように思います。
例えば、「性格の不一致」を理由に離婚した方が、離婚の際にやり取りするお金全般について、全てひっくるめて、「慰謝料を払った、または貰った」などと言うことがあります。
しかし、これは法的には正しい表現ではありません。離婚の理由が単に「性格の不一致」で、夫婦のどちら法的に悪いとは言えない離婚の場合には慰謝料は発生しません。
したがって、その場合に支払われるお金は、正確には「慰謝料」ではありません。おそらくそのお金の性質は、財産分与のことか、その他の何か別のお金であるか、その区別が曖昧なまま「慰謝料」と言ってしまっていることになります。
あまり細かいことを考える必要がないことも事実ですが、法的にはこの区別は重要ですし、この点を理解しておくことにより、離婚を有利に進めていくことができます。また離婚後に金銭の支払いを巡る新たなトラブルを防ぐこともできます。
そこで、今回は、離婚にまつわるお金の中の「慰謝料」にスポットを当てて、次のⅠ~Ⅴの問題についてご説明したいと思います。
弁護士 荒井里佳
慰謝料というのは、一言でいえば、精神的損害に対する賠償金のことです。慰謝料は、離婚以外にも交通事故や傷害事件や名誉毀損など様々なケースで問題になりますが、ここでは離婚にまつわる慰謝料について説明します。
離婚にまつわる慰謝料は、厳密には、①離婚により生じる精神的苦痛を償う慰謝料(離婚自体慰謝料)と、②離婚を招いた他方配偶者による有責行為(不貞行為、暴力、性交渉の拒否など)によって受けた精神的苦痛を償う慰謝料(離婚原因慰謝料)とに分けられます。
もっとも、裁判・実務では、両者を明確に区別せず、関連する一個の問題として一括して処理する傾向にあります。また、①、②ともに法的性質としては、不法行為に基づく損害賠償と考えられています。
慰謝料も、財産分与も、夫婦の一方から他方に対して、財産を給付するという点では同じですが、慰謝料は支払い義務を負う者に有責性が必要であるのに対して、財産分与は給付者の有責性は問題になりません。
もっとも、財産分与の額、及び方法を定める際には、「一切の事情」を考慮することになりますが(民法768条3項)、「一切の事情」には、離婚に至った諸事情、例えば離婚の原因となった個々の有責行為(不法行為)についての判断も含まれると考えられています。
そこで、慰謝料と財産分与の関係が問題になります。
この点について、判例は、財産分与は夫婦財産の清算と離婚後の扶養を目的とすると限定しながら、紛争の1回的解決を考慮して、財産分与に損害賠償の要素を考慮することもできると判断しています(最判昭和46年7月23日)。
すなわち、慰謝料請求権と財産分与の請求権とはその性質を必ずしも同じくするものではありませんが、損害賠償のための給付も含めて財産分与の額及び方法を定めることができるということです。また反対に、すでに財産分与がなされたからといって、その後に別途慰謝料を請求することは妨げられないということになります。
なお、一般的な対応としては、離婚を求めるに際して、財産分与と離婚に伴う慰謝料も合わせて請求していくことが多いです。
離婚の慰謝料が認められる典型例は、不貞行為(浮気)です。
不貞行為は、夫婦間における貞操義務(性的純潔を保つ義務)に違反する行為であり、配偶者の不貞行為は、もう一方の配偶者に対して精神的な苦痛を当たえるものです。
また、不貞行為のほか、離婚の慰謝料が発生する典型例としては、生活費を渡さなかった場合や、暴力や精神的虐待(いわゆるモラハラ)が離婚の原因となっている場合があります。
このほか、夫婦のどちらか一方に原因があって性交渉の不存在・セックスレスとなってしまっているといったときにも、一定の場合には慰謝料の支払いを求めることができると考えられています
なお、不貞行為のケースなど、第三者(不貞相手)が、配偶者と共同して加害行為を行ったと評価される場合には、第三者に対しても慰謝料を請求することが可能です。
慰謝料の法的性質が不法行為に基づく損害賠償であることは前に説明したとおりです。
相手に対する慰謝料の請求が認められるためには、相手が有責行為(不法行為)を行ったこと、その不法行為について、相手に「故意」または「過失」があることが必要です。過失というのは、通常行うべき注意を怠ったという不注意(注意義務違反)をいいます。
したがって、そもそも離婚の理由となる有責行為が存在しない場合、また有責行為について「故意」または「過失」が認められない場合には、慰謝料を請求することはできません。
例えば、単なる性格の不一致が離婚の原因となっている場合や、家族間の折り合いの悪さが離婚原因となっている場合は、夫婦のどちらかに有責行為があるとはいえませんし、「故意」または「過失」(不注意)があるとも通常は考えられませんので、慰謝料を求めることは難しいでしょう
慰謝料が請求できるとしても、結局いくらもらえるのか?
この点は、最も気になる問題ではないでしょうか。
そこで、慰謝料額を決定するうえでのポイントと様々なケースごとの慰謝料の相場について詳しくご説明いたします。
慰謝料は、精神的損害に対する賠償金ですので、離婚に伴う慰謝料は、配偶者が離婚の原因となる行為(有責行為)を行ったか否か、その有責行為によって、どれだけの精神的苦痛を被ったか否かによって、その金額が決まります。
過去の慰謝料を巡る裁判例をみても、いったいどの要素でどの程度の金額を決めているのか客観的・統一的な基準を見出すことは困難ですが、一般的には、以下の①~⑧の要素が慰謝料算定するうえでの重要な要素と考えられています。
① 離婚原因は何か・離婚に至る経緯
② 離婚原因となった有責行為の程度(違法性の程度)
③ 請求する側の落ち度の有無、程度
④ 婚姻期間・年齢
⑤ 未成年の子の有無
⑥ 有責配偶者(相手方)の資力・社会的地位
⑦ 請求者の資力
⑧ その他(別居期間の長短、離婚の有無、財産分与の有無・金額など
そこで、①~⑧の要素ごとに、どういった場合には慰謝料の増額する理由になるのか、反対に減額する理由になるのかについてご説明します。
慰謝料請求する側は、慰謝料を増やすための増額事由を主張していくことになります。また慰謝料を請求された側は、慰謝料を減らすための減額事由を主張していくことになります。
離婚の原因が不貞行為なのか暴力なのか、あるいは悪意の遺棄なのかといった問題です。
例えば、不貞行為を原因とする離婚慰謝料の相場は100万円~300万円前後と言われたり、暴力を離婚原因とする場合の離婚慰謝料の相場は50万円から300万円前後と言われています。
このように、離婚原因が何であるかという問題は、慰謝料の金額に直結する重要な問題です。
有責行為の程度は、慰謝料算定において非常に重要な要素です。
例えば、不貞行為といっても、その頻度回数や態様によって、配偶者が被る精神的苦痛の程度は変わるでしょう。また、たとえば、不倫・浮気の相手が一人なのか複数なのかと言う点でも離婚慰謝料の金額は変わってきます。
暴力についても同様です。暴力もその程度によって精神的苦痛の程度が変わります。1回だけ平手でたたいただけなのか、日常的に殴る蹴るといった暴行が加えられていたのかで、まったく慰謝料の金額は変わってきます。
このように、慰謝料の算定の際には、有責行為の程度が考慮されます。すなわち、有責行為があるとして、その行為の違法性が大きければ大きいほど慰謝料の金額は多くなります。 反対に有責行為の程度がそれほどでもなければ、その分慰謝料の金額は低くなります。
相手方に非があることが明らかな場合でも、慰謝料を請求する側にも離婚の原因の作出につき、何らかの非がある場合には、その事情が慰謝料の算定に影響することがあります。
例えば、暴力によって怪我を負ったことを理由とする慰謝料請求をする場合に、被害者がその暴力をあえて誘発するような言動があった場合や、挑発行為を繰り返した結果暴力を招いたというような事情があれば、慰謝料が減額される可能性があります。
したがって、請求する側に非がなければないほど、慰謝料の金額は多くなり、請求する側に非があればあるほど慰謝料の金額は少なくなります(究極はゼロです)。
一般には婚姻期間が長く、また年齢が高いほど金額も大きくなる傾向にあります。
例えば、結婚・同居して数か月間の夫婦のケースと、結婚・同居して10年目の夫婦とでは、後者のケースの方がより慰謝料が高くなる傾向にあります。
これまでの裁判例の傾向からして、未成年の子(未成熟子)が居る方が、いない場合よりも認められる慰謝料の金額が大きくなる傾向があります。精神的苦痛の慰謝という慰謝料の性質からすると、未成年者(未成熟子)の有無や数は関係がないようにも思えます。
もっとも、裁判所は、離婚後の子の扶養という観点を加味して、慰謝料を増額しているのかもしれません。
相手方に資力(支払い能力)があり、社会的地位が高いほど金額は大きくなる傾向にあります。
過去の裁判例をみると、稀に1000万円を超える慰謝料を認めているものがありますが、これは、相手方が多額の資産を有している場合や、相手が会社の代表者や役員及び医師などの社会的地位が高い場合がほとんどです。
精神的苦痛の慰謝という慰謝料の性質からすると、資力があればあるほど慰謝料が高くなるというのは何の根拠もないようにも思われますが、結論の妥当性と言う観点から、資力に比例して慰謝料額を高額にしているのかもしれません。
相手の資力に応じて金額が増加する根拠についてはっきりとしたことは分かりませんが、いずれにせよ、支払う側に資力があればあるほど慰謝料が高額になる傾向があるということだけ述べておきます。
慰謝料を求める側の資力が少なければ少ないほど金額が大きくなる傾向にあります。
この点についてもはっきりした根拠は不明ですが、離婚に伴う扶養的な要素が含まれているのかもしれません。
その他、有責行為を原因とする離婚の有無、別居期間の長短や、結婚期間中の夫婦の協力の程度、財産分与の有無や額、未成年者の親権、離婚後の扶養の問題などが総合的に考慮され、慰謝料額が算定されます。
相手が不貞行為をしたような場合には慰謝料請求が可能です。
不貞とは、「配偶者のある者が自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいいます。性的関係が一時的か継続的か、買春的行為か売春的行為かは問いません。
もっとも、性行為の回数が1度きりであったり、その事情次第では、請求金額が低額となる場合があります。一般的には、不貞行為をした場合の慰謝料の相場は300万円と言われることがあります。
しかし、裁判例を見ると、不貞のみを理由に300万円の慰謝料を認めたものはほとんどありません。不貞以外にも暴力やその他の理由を総合した結果、300万円の慰謝料を認めているものがほとんどです(下記の裁判例をご参照ください)。
私どもの感覚としても、不貞のみを理由に慰謝料請求した場合に認められる金額は100万円~200万円程度になることが多いような気がします。
なお、よく勘違いされている方が多いのですが、慰謝料と財産分与は異なります。
ワイドショーなどで、芸能人が離婚した際に「慰謝料1億円」などと報じられることがあります。1億円などととてつもない額を聞いて、慰謝料ってそんなに取れるんだ!と思っている方がいるのではないでしょうか?しかし、実際は慰謝料として1億円を支払ったのではなく、その中には財産分与として支払った金額が含まれており、むしろその大半が財産分与です。
この点を勘違いされている方は、「慰謝料はいっぱい取れるもの」という認識をお持ちのため、「1000万円以上とりたい」など、相場とはかけ離れた額を提示してきますが、現実にとれる慰謝料はそれほど高くないというのが実際のところです。
概要 | 妻が、夫の不貞行為、悪意の遺棄(家を出たこと)、暴力行為があった旨主張して、夫に対し、離婚と慰謝料1000万円の支払を求めた事案 |
---|
結果 | 裁判所は、夫の不貞行為と暴力があった事実を認め、慰謝料として300万円を認めた。 |
---|
概要 | 妻、夫の不貞行為又は他の女性との親密な交際、借財の秘匿、暴力といった婚姻を継続し難い重大な事由があると主張して、夫に対し、離婚、慰謝料1000万円、子の親権、財産分与として500万円の支払いなどを求めた事案 |
---|
結果 | 裁判所は、夫の不貞行為、多額の借金を抱えたこと、夫の妻に対する暴力的言動があったと認定した上で、慰謝料として150万円を認めた。 |
---|
概要 | 夫婦は、昭和48年5月20日に婚姻し平成17年3月9日に離婚している状況において(結婚期間約32年)、妻が、夫が職場の同僚と不倫関係を持ち、この女性と婚姻する目的を有していたにもかかわらずこれを秘した上で、妻に離婚を迫った上、妻に対して粗暴な態度(自宅と長男宅のドアを破壊)を示したことが原因で、夫婦は離婚に至ったと主張して、元夫に対し、離婚による慰謝料500万を請求した事案 |
---|
結果 | 裁判所は、婚姻関係の破綻の原因が、被告の不貞行為と原告に対する粗暴な態度であると認定し、慰謝料として300万円を認めた。 |
---|
概要 | 夫は、妻と不貞相手が1年以上に亘って継続的に不貞行為に及び、夫婦関係が悪化し、別居を余儀なくされたと主張して、夫から不貞相手に対し、慰謝料500万円を請求した事案示したことが原因で、夫婦は離婚に至ったと主張して、元夫に対し、離婚による慰謝料500万を請求した事案 |
---|
結果 | 不貞相手は、不貞の事実は認めながらも、不貞行為に及んだ時点で、夫の妻に対する暴力行為等が原因で夫婦関係はすでに破綻していたなどと主張したが、裁判所は不貞相手の主張を認めず、不貞相手の慰謝料として100万円を認めた。 |
---|
概要 | 夫が妻の不貞行為の相手に対して、妻の不貞によって婚姻関係が破綻したとして、夫が不貞相手に対し、慰謝料330万円(内30万円は弁護士費用)を請求した事案 |
---|
結果 | 不貞相手は、不貞関係時に婚姻が破綻していたこと、性的関係が少ないことなどを主張して争ったが、いずれの主張も認められず、不貞相手に慰謝料として165万円(内15万円は弁護士費用)を認めた。 |
---|
相手の言動により、あなたが肉体的・精神的苦痛を受けた場合、慰謝料請求が可能です。身体的な暴力に限らず、言葉による精神的な暴力についても、その程度によっては慰謝料請求が可能となります。
暴力を理由とする慰謝料請求では、暴力の内容や頻度、暴力を振るわれるようになるまでの経緯や回数が慰謝料の額を決定するうえでポイントとなります。例えば、1回きりなのか、何度も繰り返し暴力を振るわれたのか。さらには、それによるケガや障害、後遺症がどの程度なのかを検討して決めます。この場合の慰謝料の相場は、50万円~300万円と言われています。
不貞行為に比べて、慰謝料額の相場に開きがあるのは、暴力や暴言の場合は、行為態様や被害の結果が様々なためです。
また、下記の裁判例をみると、不貞と同様、暴力や暴言のみを理由する慰謝料の金額が300万円を超えることはそれほど多くありません。
概要 | 妻は、夫に対し、離婚原因として、①浪費する、②生活費を渡さない、③精神的に妻を虐待する、④妻に暴力を振るうことなどを主張し、離婚とともに、慰謝料として300万円、子の親権、養育費及び財産分与の支払などを求めた事案 |
---|
結果 | 裁判所は、妻の主張する夫の暴力や浪費などの事実を認め、夫に対し離婚に伴う慰謝料として200万円を認めた。 |
---|
概要 | 元妻が、協議離婚した元夫に対し、婚姻から離婚に至るまでの有責行為(暴言や暴力)による慰謝料として500万円を請求した事案 |
---|
結果 | 裁判所は、被告の有責行為を認定したが、暴力や暴言の程度、婚姻期間が短期間であることなどを考慮した上で、慰謝料100万円を認めた。 |
---|
概要 | 夫が婚姻関係中に妻と性的交渉を持たず、引いては離婚を余儀なくされたとして、元妻から元夫に対して、慰謝料1000万円を求めた事案 |
---|
結果 | 裁判所は、夫が婚姻関係中に性的交渉を持たず、それが原因で離婚を余儀なくされたとして、慰謝料として100万円を認めた。 |
---|
概要 | 妻が、夫と妻に対する暴行・虐待、夫婦間の性交渉がないことなど婚姻関係を継続し難い重大な事由があると主張して、夫に対し、離婚、離婚に伴う1億円の財産分与、1500万円の慰謝料の支払を求めた事案 |
---|
結果 | 裁判所は、妻の主張する暴力の一部を認定し、性交渉が無かったことなどの事情を考慮し、慰謝料300万円を認めた。 |
---|
概要 | 夫の妻に対する思いやりに欠け、身勝手であること、仕事をせず怠惰な性格、不誠実であること、夫が金銭的にルーズな性格であることが離婚にいたった原因であるとして、妻が夫に対して慰謝料300万円を請求した事案 |
---|
結果 | 裁判所は、妻の主張を認め、夫に対して慰謝料200万円を認めた。 |
---|
概要 | 妻が、夫に対して、金銭的に多額の援助をしてきたにもかかわらず、被告は、生まれたばかりの子どもを置いて家を出て、その後、夫婦関係の改善を図ることなく離婚調停を申し立てたり、調停で決まった養育費の支払いを怠ったりしていたことなどを理由として、原告が被告に対し、慰謝料として1000万円を請求した事案 |
---|
結果 | 裁判所は、原告の主張する事実を概ね認め、離婚に伴う慰謝料として300万円を認めた。 |
---|
「証拠が無いと慰謝料はもらえませんか?」というご相談を受けることよくあります。
結論から申しますと、「相手が、浮気や暴力などの慰謝料を請求する理由について否定している場合には、証拠が必要になる」というのが答えです。
すなわち、証拠が無いと慰謝料を請求してはならないということはありません。証拠が無くても、相手が不倫とか暴力を認め、慰謝料を支払ってきたら、受け取ればよいのです。
もっとも、相手が、こちらが主張する慰謝料を請求する理由について否定しており、慰謝料の支払いを拒んでいる場合には、こちらは、証拠により、こちらの主張する理由を立証しなければなりません。
したがって、不貞などの証拠が全くなく、配偶者も不倫相手も不倫の事実を認めていない状況では、不倫相手を被告にして訴訟を起こしても、その訴訟に勝てる可能性は極めて低いと言えます。
もっとも、上記Ⅴ-1は訴訟を起こす場合の話です。
慰謝料を慰謝料を請求する方法としては、内容証明郵便等による支払要求、調停や裁判による慰謝料請求の方法などがあります。
訴訟になる前の段階(内容証明郵便等で不倫の慰謝料を請求するなど)においては、証拠の有無自体は関係ありません。
もちろん、何らかの明確な証拠があれば有利ではありますが、配偶者と不倫相手間における明確な不倫の証拠がないからといって不倫の慰謝料を請求できないわけではありませんし、不倫相手が慰謝料を支払わないと決まっているわけでもありません。
しかし、もし不倫をしてもいない相手に対して慰謝料請求をしてしまった場合、その相手から反撃される(逆に名誉毀損や不当訴訟等)恐れがあります。
また調停では、訴訟とは異なり、必ずしも証拠はいらないとは言え、やはり証拠がある方が、調停委員に話を信じて理解してもらえる可能性が高まります。また、裁判の際には、相手が否定している場合には、訴える側(原告側)が証拠によって事実を立証しなければなりません。
したがって、結局のところ、相手が浮気や暴力の事実を否定しているのであれば、証拠が必要ということになります。
なお、交渉段階では、一応認めていても、調停や裁判を起こしたら否定してきた、というケースも多々あります。したがって、交渉段階で相手が認めた場合には、そのことを一筆書いてもらうとか、録音しておくなどして、証拠化しておくことを強くお勧めします。
このような写真や動画があれば、浮気の否定しようにも言い逃れをすることはほぼ不可能ですので、非常に強い証拠といえます。
このような写真や動画がある場合、肉体関係をもったことを強く推認することができますので、強い証拠といえます。ただし、写真は、配偶者の顔が分かるよう正面から撮影したものがあるのが望ましいです。
また、ラブホテルではなく、ビジネスホテルの出入り写真では、「打ち合わせをしていた」などと言い訳できてしまう可能性があるので、必ずしも有力な証拠にはならないので、注意が必要です。
なお、デジタルカメラは、画像の編集修整が簡単にできてしまうので、一般的に証拠としての能力が弱いという面があります。
例えば、夫婦の会話の中で配偶者が不貞の事実を認めるような言葉を述べた場合、その言葉を録音したデータは浮気の証拠となります。
なお、ICレコーダー等は、録音した内容を編集することが出来ますので、証拠能力としては弱いと判断されることもあるので注意が必要です。
配偶者が不貞行為を認める手紙やメモも証拠になります。
最近は、携帯電話やPCでのメールやSNS(LINE、フェイスブック、ミクシィなど)によるやり取りから、配偶者の浮気が発覚するケースが多いようです。
しかし、携帯電話メールを見た、又はメールの内容を写真に撮ったというだけでは、それは配偶者と異性がメールのやり取りをして交際していたという事実は証明されても、直ちに不貞行為の証拠にはなりません。
「何時にどこで会う」との内容であれば、会ったという事実の状況証拠に過ぎず、証拠能力として弱いでしょう。
もっとも、メールやSNS上でのやりとりから、両者の関係がきわめて親密であることや肉体関係の存在をうかがわせるものであれば、不貞の証拠となる可能性はあります。
これらの状況証拠を積み重ねることによって、浮気や不倫による不貞行為があった事実を推認することが可能です。
など
初回30分無料相談! 担当弁護士を選べます。
当事務所では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止および安全確保のため、ご希望の方を対象にZoomを利用した法律相談を実施しています。詳しくは以下のリンクをご覧ください。